外川審査訴訟について
平成8年1月16日、私は、3件の歯周治療用装置(歯周治療用装置の症例写真)に関わる診療報酬の支払を求めて、支払基金に対して訴訟をおこしました。この診療報酬の請求は、患者に必要な歯科医療行為に基づき社会保険の規則に従って行われたものです。電話による問い合わせ、再審査請求、面談の申し入れ等、約半年間に渡って査定理由開示を求めたにもかかわらず、審査委員会の誠意ある対応が得られなかったことがその要因です。
金額は2,750円と僅かではありますが、理由が分からない減点査定を受け入れることに納得できませんでしたので、訴訟に踏み切りました。
裁判の要約
この裁判は、原告が請求した歯周治療用装置が診療報酬規則の三要件を満たすか否かを争っています。
歯周治療用装置算定の三要件
1)治療計画書に基づくこと
2)最終的な治療として歯冠修復及び欠損補綴を行なうまでの間に行なわれること、即ち、最終的な治療としての歯冠修復及び欠損補綴の一環として行なわれるものでないこと
3)残存歯の保護と咬合の回復のために行なわれること
1)に関して、被告は、原告のカルテを閲覧した後に、新たな査定理由を主張しました。それは、治療計画書に歯周治療用装置の記載がないので歯周治療用装置として算定できないというものです。
このような決まりは存在しません。
2)に関して、被告は「歯周治療用装置は最終歯冠修復の一環として行われた。」と主張しています。その主張の根拠は、以下の3点です。
・歯周治療用装置装着時の歯周疾患は治癒していた。
・メタルコアーの印象採得は最終歯冠修復の処置である。
・歯周治療は早期に行われるものであることは医学常識である。
どの根拠も歯科医学的矛盾に満ちたものです。
3)は、争点となっておりません。
これらが今回の裁判の要約です。この裁判が単純なものであることをご理解いただけると思います。また、被告が裁判にて主張している査定理由は、被告が当初私に告げたものではありません。すなわち、被告は当初の減点査定が間違いであったことをすでに認めているのです。それでも、被告は新たに減点査定理由を作り上げて裁判を維持しているのです。
外川審査訴訟の目的
理由を明かさない減点査定を減少させるために提訴しました。
外川審査訴訟の資料庫
外川審査訴訟の訴状、相手側の準備書面、当方の準備書面、証拠説明書、判決等この訴訟に関する資料を必要とされる方は、外川審査訴訟の資料庫をクリックして下さい。
外川審査訴訟の控訴資料庫
外川審査訴訟の控訴関係の資料を必要とされる方は、外川審査訴訟の控訴資料庫をクリックして下さい。
提訴に至るまでの経過
平成7年6・8月分増減点連絡書送付
歯周治療用装置3件350点が査定されました。査定の理由は「ヒフク冠Bケ(過剰と認められる手術)」および「ヒフク冠Dケ(不適当又は不必要と認められる手術)」でした。支払基金に理由を問い合わせたところ、「事務では分からないので審査委員会に聞いてくれ」とのことでした。直接審査委員に問い合わせたところ、説明は増減点連絡書に記載されている内容とは異なるもので、矛盾があり、到底理解できるものではありませんでした。その矛盾点について質問したところ、審査委員は「そのようなことは医学常識である」と回答しました。「外川は医学常識がない」という発言です。最後に、再審査請求の提出を要請されました。私は査定の理由を問い合わせているのであって、査定の復活を要請しているのではないと伝えたのですが、聞き入れてもらえませんでした。
平成7年9月8日
査定理由開示を求める再審査請求書を支払基金に提出しました。
平成7年11月1日
「原審どおり」の再審査結果通知書(平成7年10月17日付け)を受け取りました。その理由は、「歯冠修復の製作に係る一連の診療行為における暫間被覆冠は所定点数に含まれます」というものです。この理由は、歯科点数表の解釈にある「歯周治療用装置とは、冶療計画書に基づき、最柊的な治療として歯冠修復及び欠損補綴を行うまでの間、残存歯の保護と咬合の回復のために行う被覆冠又は床義歯をいう」という規定に照らして査定理由として理解できるものではありませんでした。
平成7年12月5日
以上のことから、私は査定理由の開示を求めて審査委員会に面接懇談を申し入れました。
平成7年12月下旬
支払基金から面接懇談日程(平成8年1月11日午後1時より)が提示され、私はその日程に同意しました。
平成8年1月9日
審査委員会の歯科代表より、友人の同席者の存在を理由に1月11日の面接懇談を拒否する旨通告されました。
平成8年1月16日
面接懇談の道が断たれ、訴状提出期眼が処分通知から3カ月以内(この場合10月17日から数えて3ケ月以内は1月16日にあたる)という民法の規定により、やむなく訴状を盛岡地方裁判所へ提出しました。訴状は受理され、3月に公判が開始されました。
MAIL : sotokawashika@ozzio.jp