【書籍表題】
自然保護事典2海 岩手県沿岸漁業者の海を守る運動
【出版社名】
外川 正:岩手県沿岸漁業者の海を守る運動,全国自然保護連合編,自然保護事典2海,154~169,緑風出版,東京,1995.
【解説】
岩手県の沿岸は、本州北部の東側に面し、沖合いでは、親潮と黒潮が潮目を形成することから、沿岸・沖合いとも豊かな漁場となっている。一方、海岸線は、複雑なリアス構造を呈し、一部が人工物に置き換えられたとはいえ、大部分は昔のままの姿を残している。その深く入り組んだ湾内では養殖漁業が営まれ、岩手県民に豊かな自然の恵みを提供し続けている。
五つの事例を提示し、岩手県沿岸の様々な形の自然破壊とそんれらに対峙する沿岸漁業者の海を守る運動を説明した。漁業を脅かす環境破壊の中には、目に見えるもの(企業誘致や埋め立てによる自然破壊)と目に見えないもの(合成洗剤等による自然破壊)とがある。目に見える自然破壊に対しては、近年漁業者が敏感に反応し、その因子を断ってきている。しかしながら、目に見えない自然破壊に対しては、その発生・進行の予測が困難であり、その努力が十分巧を奏しているわけではない。年々沿岸のアワビ漁獲量が減少している。その原因がこの目に見えない自然破壊の中に存在するとしたら、ゆゆしき問題である。それは単にアワビだけにとどまらず、人類の存亡に関わる大変な問題を意味するのである。いまこそ、海の環境を守る運動を沿岸から内陸に拡大する必要がある。
岩手県の沿岸
沿岸の海中は魚介類の宝庫
合成洗剤使用禁止を訴える宮古市重茂の看板(重茂漁業協同組合提供)
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