【論文題名】
An analysis of clinical breakage of root canal instruments.
【掲載誌名】
Sotokawa T. : An analysis of clinical breakage of root canal instruments,
J Endodon, 14 : 75~82, 1988.
【抄録】
本研究により、ファイルの根管内破折に金属疲労破壊が深く関与していることが明らかとなった。ファイルの破折は次の過程で生じると考えられる。
1.最初エッジ部付近に起点となるものが発生する。その起点は金属表面上の初期欠陥部であることもある。
2.金属疲労破壊は、その起点からファイルの中心部に向かって扇状に伝播する。
3.金属疲労破壊がある程度まで伝播したところで延性破壊が一挙に起こり、ファイルは破折に至る。
このファイルの破折原因の究明により、一定の破折防止方法が示唆された。
歯内療法用器具のエッジ部に認められた微小亀裂の拡大写真(×1,000)
破断面のエッジ部を扇のかなめとする金属疲労破壊を証明する扇型ストライエーション(貝殻模様)が認められる。(×270)
上記論文がアメリカの歯内療法の教科書であるイングルのエンドドンティックス第4版に引用された。
【掲載誌名】
Ingle, J.I. and Bakland L. K. :Endodontics fourth edition, 165, Williams & Wilkins, Phila., 1994.
【引用内容】
外川は、廃棄された歯内療法用器具を分析し、破折の原因が金属疲労にあることを発見した。亀裂の起点は器具のエッジ部から始まり、器具の中心部に向かって広がる。また、外川は、器具の破損状態により分類を行った。彼は、10号の器具が最も多く廃棄されることを発見した。
歯内療法用器具破損の分類
【論文題名】
(総説)歯内療法用器具の根管内破折
【掲載誌名】
外川 正:歯内療法用器具の根管内破折,日歯内療誌,10:20〜27,1989.
【抄録】
歯内療法用器具の根管内破折に関わる問題は歯科医師を悩まし続けてきた。また、器具の破折は未熟な歯科医師だけの問題ではなく熟練した専門医にも起こり得ると言われている。一方、歯内療法学と技術の発達に伴って、器具破折によって引き起こされる臨床上の問題はますます複雑化し、歯内療法における最も重要な問題のひとつとなりつつある。
本稿は、根管内の器具破折の問題に関して、歯科医師が過去から現在に至るまでどのように対処してきたか、現在どのように取り組まれてどの程度解明されてきているか、そしてこの問題の解決に最良と思われる方法を紹介する。
歯内療法用器具を保管・滅菌・管理するための金属ケース
【論文題名】
A systematic approach to preventing intracanal breakage of endodontic files
【掲載誌名】
Sotokawa T. : A systematic approach to preventing intracanal breakage of endodontic files, Endod Dent Traumatol, 6 : 60~62, 1990.
【抄録】
この研究は歯内療法用器具破折防止方法の効果を確認するために行われた。それぞれの号数のKファイルに使用期限が設定する破折防止方法が、著者の診療所にて3年間にわたって行われた。変形のあるなしに関わらず、使用期限に達した器具は廃棄された。3年間の間に、1933本のファイル(1カ月当たり53.7本)が廃棄され、その間3269本の根管がプレパレーションされた。この破折防止方法を取り入れる前まで1カ月当たり1.4本破折していたのに対して、この破折防止方法を取り入れてから、1カ月当たり0.1本(全部で5本)に減少した。この3年間に廃棄された器具は1カ月当たり53.7本であった。この破折防止方法を取り入れる前は、月平均76.5本であった。その結果、このシステムは歯内療法用器具の根管内破折防止に有効であり、器具の消費本数の面でも問題ないことが示唆された。
Kファイルの使用期限
#08~10 | 変形するまで |
#15~30 | 1ヶ月間 |
#35~45 | 3ヶ月間 |
#50~60 | 6ヶ月間 |
#70~120 | 1年間 |
【論文題名】
A systematic approach to preventing intracanal breakage of endodontic files
【掲載誌名】
Sotokawa T. : A systematic approach to preventing intracanal breakage of endodontic files, Meskin L. H., Currier G. F., Kennedy J. E. ets : The Year Book of Dentistry, 162~163, Mosby, St. Louis, 1991.
【抄録】
前記論文要旨がイヤーブックテンティストリーに掲載された。
【論文題名】
歯内療法用器具の根管内破折防止方法
【掲載誌名】
外川 正:歯内療法用器具の根管内破折防止方法,日歯保誌,36:868〜873,1993.
【抄録】
今回著者は、以前紹介した破折防止方法に改良を加え、新たに器具の選択・管理・操作条件(表1)および各号数ごとの使用期限(表2)を設定した歯内療法用器具破折防止方法を提唱する。この方法は著者の診療所にて4年間にわたって実施された。
表1 歯内療法用器具破折防止の歯内療法用器具操作条件
1) | 器具を頻繁に点検し、不可逆的屈曲変形とねじり変形を受けた器具は廃棄する。 |
2) | ねじり操作は連続させない。 |
3) | 反時計方向のねじり操作は行わない。 |
表2 歯内療法用器具の使用期限
#08 | 変形するまで |
#10~20 | 1ヶ月間 |
#25,30 | 3ヶ月間 |
#35~45 | 6ヶ月間 |
#50~130 | 1年間 |
この間使用期限に達した器具は変形のあるなしに関わらずすべて廃棄された。この4年間に3,864本の根管形成がなされ、2,872本の器具が廃棄された。器具の破折は1本(1カ月あたり0.02本)認められ、この方法を採用する以前の状況(1カ月あたり0.14本)と比較した。
その結果、以下のことが明らかになった。
1.この歯内療法用器具破折防止方法は、根管内での歯内療法用器具の破折を防止し、歯内療法用器具破折に対する術者の不安を解消するという大きなメリットを歯科医師にもたらすものである。
2.本方法は、歯内療法用器具・スポンジ・保管ケースを1セットとして滅菌することが可能なため、歯内療法用器具を媒体とする細菌あるいはウイルス感染を防止するものと思われる。
3.本方法は、診療患者数の異なる歯科医院でも容易に採用が可能である。
【論文題名】
歯内療法用器具の根管内破折防止方法の評価
【掲載誌名】
外川 正: 歯内療法用器具の根管内破折防止方法の評価,日歯内療誌 21(2):85〜88,2000.
【抄録】
この研究の目的は、著者が提唱した歯内療法用器具の根管内破折防止方法を評価することである。その器具破折防止方法は、「歯内療法用器具の選択」「歯内療法用器具の管理」「歯内療法用器具の操作条件」「歯内療法用器具の使用回数の設定」の4つの要素からなる。著者はその器具破折防止方法を著者の診療所にて7年間に渡り採用した。
この7年間に、4,075本のファイルが5,357根管の根管形成の後に廃棄された。(1根管当たり0.76本のファイル)この間に、破折した歯内療法用器具は認められなかった。
このシステムは、臨床上の器具破折防止に非常に効果的であることが明らかとなった。このシステムを採用することにより、開業歯科医院と歯内療法を行う頻度が多い歯科医療機関において、破折片除去作業に費やす労力を省くことができるのである。
【論文題名】
歯内療法用器具使用に際して把握すべき金属材料科学
【掲載誌名】
外川 正:歯内療法用器具使用に際して把握すべき金属材料科学,日歯内療誌 23(1):5〜11,2002.
【抄録】
歯内療法用器具は、屈曲した根管内で複雑に操作されるなど極めて過酷な状況下で使用されている。その結果、歯内療法用器具は、湾曲永久変形を繰り返したりあるいはねじりを伴った強い永久変形を生じる。したがって、歯科医師は、その金属の特性を含む器具自体の特性を把握しておれば、器具の破折による医療事故を防止することができ、さらに、より満足できる治療結果を得ることができるのである。
本稿は、歯内療法用器具操作に際して必要とされる金属材料科学ならびに歯内療法用器具の破折原因について述べる。
ストライエーションの形成機構
【論文題名】
歯内療法用器具の根管内破折防止対策
【掲載誌名】
外川 正:歯内療法用器具の根管内破折防止対策,日歯内療誌 24(1・2):1〜8,2003.
【緒言(抜粋)】
歯内療法用器具の根管内破折は、患者と歯科医師に深刻な問題を引き起こすことが多い。すなわち、破折片を残留させた歯を口腔内に持つ患者にとって、その偶発事故から生じるストレスはきわめて深刻なものがある。また、歯科医師は、破折片を除去するための余計な労力を強要され、場合によっては保存する予定の歯を抜歯に至らしめることさえある。さらに、自分の失敗と将来のリスクをその患者に対して詳細に説明する必要が生じる。その患者が損害賠償を求めた場合には、歯科医師はその求めに真摯に対応する義務を果たさなければならないことになる。
したがって、歯内療法に携わるすべての歯科医師は、歯内療法用器具の根管内破折を深刻な問題として受けとめ、その破折防止対策に真摯に取り組む必要がある。
【まとめ】
歯内療法用器具の根管内破折を防止することは、破折片除去作業に費やす労力を節約し患者との信頼関係を深め、歯科医師に大きな利益をもたらす。
著者の提言した器具破折防止方法は、患者数等の状況が異なる歯科医療機関においても容易に採用しうる。また、多数の器具を消費することはなく経済的な面において歯科医師にかかる負担は少ない。
歯科医師は、器具破折の原因を理解しその防止対策を講ずることにより、ほとんどの器具破折は容易に防止することができる。その結果、歯科医師は器具破折に対する不安を持つことなく器具を操作することができる。
表3 毎月末に廃棄・補充する歯内療法用器具の号数
1月末 | 10,15号 |
2月末 | 10,15号 |
3月末 | 10〜30号 |
4月末 | 10,15号 |
5月末 | 10,15号 |
6月末 | 10〜40号 |
7月末 | 10,15号 |
8月末 | 10,15号 |
9月末 | 10〜30号 |
10月末 | 10,15号 |
11月末 | 10,15号 |
12月末 | 全器具 |
MAIL : sotokawashika@ozzio.jp